「明治~戦中少女雑誌の権利者所在調査プロジェクト」コラム その3

竹久1

今回は「雑誌」を対象に権利調査を行っていますが、雑誌にはさまざまな種類の著作物が掲載されています。それぞれの「著作権の保護期間」について、『少女画報』の終刊が1942年であることをふまえて確認してみましょう。

■編集著作物(雑誌全体。出版社などの団体名義)……公表後50年

雑誌としての『少女画報』は公表から70年以上が経過していますので、保護期間は終了しています。また、団体名義の著作物全般も、映画を除いて公表後50年で終了です。

■言語の著作物(小説・詩など)…………著作者の没後50年
■音楽の著作物(歌詞・楽譜など)………著作者の没後50年
■美術の著作物(絵画・マンガなど)……著作者の没後50年

一般的な著作者の没後からの起算のため、著作者の調査が必要になります。

★写真の著作物…………著作者の没後50年 (1956年までのものは権利消滅)

現在の著作権法では「著作者の没後50年」ですが、1997年に改訂される前の著作権法では「公表後50年」でした。このため1997年の段階ですでに保護期間が終了している写真については、著作者の生没にかかわらず著作権が切れていることになります。

写真の著作物については段階的な変更がありますが、まとめると「1956年までに公表された写真はすべて保護期間が終了している」ことになります。『少女画報』の場合も終了しています。

★映画の著作物…………公表後70年 (1952年までのものは権利消滅)

こちらも著作権法の改正があり、1952年以前のものは保護期間が終了しています。ただし、個人名義の映像については旧著作権法の「著作者の没後38年まで」のルールで保護されているものもあります。

★外国人の著作物…………日本の著作権法に準じるが、「戦時加算」に注意

日本での利用は日本の著作権法に準じますが、第二次世界大戦の連合国とその国民に対しては保護期間が戦争期間分延長される(国によって期間は異なる)というペナルティを負っています。『少女画報』に掲載された時代のものについては「戦時加算」の対象になります。

以上の点をふまえると、公表後○年のケースはすべて権利が消滅しており、没後50年のケースも、1965年までに亡くなられた日本人は2016年には保護期間が終了になります。これらに従って997人をどんどん振り分けていきましょう。

参考 文化庁「著作権なるほど質問箱 (4)保護期間」 ※2012年時点の記事
http://chosakuken.bunka.go.jp/naruhodo/outline/4.4.html
※TPPなどの条約の影響はまだ不明です

もうひとつ、著作権法で重要なポイントがあります。今回のプロジェクトは、貴重な資料の「保存」と「活用」を目的としていますが、図書館による「保存」のための複製は一部で認められているものの、運用方法の解釈があまり明確ではありませんでした。

2015年3月(平成26年度)の文化審議会著作権分科会において、「アーカイブ化の促進に係る著作権制度上の課題」が審議され、著作権法第31条第1項の解釈として、

・貴重書については損傷等が始まる前の良好な状態で複製することも可能
・記録技術・媒体の旧式化の対策として新しい媒体への移替えのために複製することも可能

であることが示されました。他の論点も議論されていますが、この時点で法解釈として明確になっているのは上記の点です。保存した複製物(デジタルデータ)の館内閲覧や公開、それができる主体については、まだ解釈は固まっていないようです。

文化審議会著作権分科会(第41回) 議事内容報告
http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/bunkakai/41/index.html

「保存」だけであれば、現行法でも権利を侵害することなくデジタル化などが可能であることが示されたわけですが、「保存」だけでは有効なアーカイブとは言えません。さらに先の「活用」に向けて、権利の調査を進めていくことになります。

(その3 了)

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