コラム「その1」でご紹介した熊本県菊陽町図書館の「村崎コレクション」。この蔵書から、村崎修三さんは今年7月に『乙女のふろく』(青幻舎)を上梓しました。明治・大正・昭和の時代の「少女雑誌」のふろくを中心に、中原淳一、竹久夢二、松本かつぢ、蕗谷虹児、高畠華宵といった画家の華麗な絵を紹介したものです。
乙女のふろく ―明治・大正・昭和の少女雑誌―
http://www.seigensha.com/newbook/2015/06/11120008
明治時代から続く「少女雑誌」にははさまざな種類がありました。草分けの『少女界』(金港堂書籍)から、『少女世界』(博文館)、戦後まで続いた『少女の友』(実業之日本社)など、今となっては貴重な雑誌たちです。
今回のプロジェクトでは、その中で『少女画報』(東京社・新泉社)に注目しました。『少女画報』は、国木田独歩による『婦人画報』の流れを汲む東京社が 1912年に創刊した雑誌で、新泉社へと引き継がれた後、1942年に戦時下の雑誌統合令により『少女の友』と合併する形で消滅したようです。
『少女画報』は、戦後も小説家として活躍した吉屋信子の『花物語』が人気を博したほか、の蕗谷虹児が「蕗谷紅児」名義でデビューし看板画家になるなど、歴史的にも重要なポジションを占めています。
国立国会図書館にも一部所蔵があり、テジタル化されたものが館内閲覧できますが、所蔵はそろっておらず、菊陽町図書館が所蔵する巻号のうち、国立国会図書館と重複しているのはごく一部です。それだけに稀少度が高い資料といえるでしょう。
今回のプロジェクトでは、菊陽町図書館の『少女画報』の所蔵のうち75冊を対象とし、アーカイブと利活用を目的とした権利所在調査を行うことにいたしまし た。この75冊は、科学研究費補助金をうけて京都国際マンガミュージアムによって巻号情報・目次情報が調査・テキスト化されています。菊陽町図書館と京都 国際マンガミュージアムの協力のもと、先行する研究を活用する形で権利所在調査を進めていきます。
『少女画報』の目次データを調査し、75冊から997人の著者名がピックアップできました。当時の少女雑誌コンテンツは小説や詩句などの読みものが中心 で、そこへ挿絵が入り、一部に写真やマンガ作品が掲載されています。歌の紹介などもあり、後のマンガ雑誌などと比べて、著作者のジャンルは多岐にわたりま す。
それにしても、古いもので1910年代の雑誌ですから、約70~100年の隔たりがあります。2015年時点でご存命の著者の方はかなり少ないと考えられ ますが、没後50年という著作権保護期間を考えれば、権利が残っているものも多数あることは予想できます。しかも複数のジャンルにわたっていることから、 限られた専門資料を見れば解決するものでもありません。
さて、抽出された997人から、どのくらいの方の所在が判明するでしょうか。わずかな手掛かりをヒントに、人探しの旅が始まります。
(その2 了)